株式会社Tの事例
日本の中小企業におけるFOSS(フリー・オープンソースソフトウェア)活用事例
株式会社T社は、東京に本社を置く従業員50名の中小IT企業です。同社は、コスト削減と業務効率化を目指してFOSSの導入を決定しました。
導入前の課題
- 高額なソフトウェアライセンス費用
- 複数の有料サブスクリプションサービスによる経費の増大
- カスタマイズ性の低さによる業務効率の低下
- ベンダーロックインによる柔軟性の欠如
1. 現状分析と目標設定
FOSS導入プロセス
IT部門は、現在使用中のソフトウェアとその費用を詳細に分析しました。年間のソフトウェア関連費用は約1000万円で、その大半がライセンス料とサブスクリプション費用でした
2. FOSSの選定
以下のFOSSを主要業務ソフトウェアとして選定しました:
- オフィススイート:LibreOffice
- プロジェクト管理:OpenProject
- 顧客管理(CRM):SuiteCRM
- ウェブサーバー:Apache
- データベース:PostgreSQL
3. 段階的導入
- パイロットグループ(10名)で2ヶ月間試験運用
- フィードバックを基に必要な調整を実施
- 全社的な導入を6ヶ月かけて段階的に実施
4. 従業員教育
- 外部講師を招いてFOSSの基本概念と利点について講習会を開催
- 各ソフトウェアの使用方法に関する社内トレーニングを実施
導入結果
コスト削減 ソフトウェア関連費用が年間約700万円削減(70%減) ハードウェア要件の緩和により、PC更新サイクルを延長し、年間約100万円の追加削減
業務効率の向上 カスタマイズ性の向上により、業務フローに最適化したシステムを構築 プロジェクト完了時間が平均15%短縮
セキュリティの強化 オープンソースコミュニティによる迅速なセキュリティアップデート 社内でのコード監査が可能になり、潜在的な脆弱性を早期に発見・対処
イノベーションの促進 開発者がFOSSコミュニティに参加し、最新の技術動向をキャッチアップ 社内プロジェクトの一部をオープンソース化し、外部からのフィードバックを獲得
課題と対策 言語バリア:日本語ドキュメントの作成と社内知識ベースの構築 サポート体制:社内FOSS専門チームの設立と外部コンサルタントとの連携 互換性問題:段階的な移行と必要に応じたプラグイン開発
今後の展望
株式会社T社は、FOSSの導入により競争力を大幅に向上させました。今後は、以下の取り組みを計画しています:
- FOSSコミュニティへの積極的な貢献
- 自社開発ソフトウェアのオープンソース化検討
- 他の日本企業へのFOSS導入支援サービスの展開
この事例は、日本の中小企業がFOSSを活用することで、コスト削減だけでなく、イノベーションの促進や競争力の強化を実現できることを示しています。政府の推進する「デジタル化」戦略においても、FOSSの活用は重要な役割を果たすと期待されています。